趣旨
建築物省エネ法(正式名称:建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律)は、建築物の省エネ性能を向上させ、2050年のカーボンニュートラルや、2030年の温室効果ガス削減目標の達成を支援する法律である。
建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律 | e-Gov 法令検索
建築物は日本のエネルギー消費量の約3割を占めるとされており、この分野での省エネ性能の向上は国全体の脱炭素政策において重要な位置を占めている。
経緯
我が国では、家庭や企業におけるエネルギー消費の増加が課題となっており、特に建築物の断熱性能や設備効率の低さがエネルギー消費の大きな要因となってきた。
また、2050年のカーボンニュートラルや2030年の温室効果ガス削減目標の実現に向けて、建築物分野においても省エネ性能の抜本的な向上が求められている。こうした背景から、従来は努力義務にとどまっていた省エネ基準への適合について、段階的に義務化を進める方向で制度改正が行われてきた。
本法の詳細
本法は、建築物のエネルギー消費性能について一定の基準(省エネ基準)を定め、新築・増改築時において当該基準への適合を求めるものである。
特に、2022年の法改正および2025年の施行により、省エネ基準への適合義務の範囲が大幅に拡大され、従来の「一部義務・努力義務」から「原則義務化」へと大きく転換された点が重要である。
主な制度内容は以下の通りである。
省エネ基準適合義務の全面化
2025年4月以降、原則としてすべての新築建築物(住宅・非住宅)に対して、省エネ基準への適合が義務付けられた。従来は大規模非住宅建築物に限定されていた義務が全面的に拡大され、省エネ基準を満たさない建築物は建築自体が認められない仕組みとなっている。
適合性審査の義務化・手続きの厳格化
建築確認手続きの中で、省エネ基準への適合性審査(省エネ適判)が必須となり、設計・施工段階における省エネ対応が制度的に担保されるようになった。
従来制度(届出・説明義務)の廃止
従来存在していた届出義務や説明義務は廃止され、すべての建築物に対して直接的な「適合義務」が課される形へと一本化された。
性能基準の内容
省エネ基準は、外皮性能(断熱・機密性能)や一次エネルギー消費量(空調・照明・給油等の設備効率)といった観点から評価される。
このように、本法は単なる努力義務にとどまらず、建築物の省エネ性能を、「満たさなければ建てられない」必須要件とする制度へと変化していることがわかる。
今後の動向
上述の通り、2025年4月1日より施行された改正法により、原則として、すべての新築建築物に対して省エネ基準への適合が義務化される。これにより、住宅・非住宅を問わず、省エネ性能の確保が必須となる。
ここからはあくまで想像にはなるが、他のエコ関連の法律の規制の在り方などを踏まえると、今後はより高い省エネ性能への誘導が進み、実質的に高効率設備や再生可能エネルギーの導入が求められる方向に進むと見込まれる。さらに中長期的には、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、建築物のライフサイクル全体でのエネルギー最適化が求められるようになり、本法もより具体的に建築物における省エネ対策をルール化する可能性が高いだろう。
設備機械のリペア・メンテナンスへの影響
建築物省エネ法の強化により、企業や建物のオーナーには、省エネ基準を満たすだけでなく、その性能を継続的に維持・向上させることが求められるようになる。
従来は、空調や照明などの設備を導入した時点で対応が完了するケースが多かったが、今後は運用段階におけるエネルギー効率の最適化や、設備の継続的な更新が重要となる。
このような環境下では、設備を自社で保有するのではなく、サービスとして利用するEaaSの有効性が高まる。
EaaSを活用することで、
- 初期投資を抑えつつ高効率設備を導入できる
- 技術進化や規制強化に応じた設備更新を柔軟に行える
- 運用・保守を含めたエネルギー最適化が可能となる
といったメリットがあり、特に空調・照明・エネルギーマネジメントといったメンテナンス領域において、高い親和性を有する。
したがって、本法の規制強化は、建築物における設備の「導入」から「継続的な運用最適化」への転換を促し、EaaSモデルの導入を後押しする要因となるのではないだろうか。